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「誰かから貰った物じゃないのか? それに何で泣いているんだ?」
叔父さんが怪訝そうな顔で、僕の顔を覗き込む。
「……大丈夫です。何でもないですから」
「もしかして……失恋でもしたのか?」
僕は唇を噛み締め、小さく頷く。叔父さんが困ったような表情で「まぁー生きていれば何度も経験することだから」と歯切れ悪く言葉を漏らす。
「手紙を見たら思い出しちゃいそうで……もう、思い出したくないんです……」
「失恋したからと言って、別に無理して忘れることはないんだよ。良い思い出にしちゃえばいいだけなんだから」
叔父さんは優しげに微笑み、僕の肩に手を置く。その行為がどれほどまでに僕を歓喜させ、同時に辛い気持ちにさせるのか。きっと知る由もないだろう。
この恋は初めから失恋だ。中学三年ぐらいから僕は、この叔父さんに淡い感情を抱いていた。
相手は男。加えて親族。歳だって二回りは違う。それでも恋心というものは厄介なもので、なかなか諦めが付かず、僕は高校三年生の今でも彼に恋心を抱いていた。
「僕……来年から都内の大学に行くんです」
燃えて灰と化していく手紙を、僕は霞む視界の中で見つめ続ける。この手紙は叔父さんが高校の入学祝いに、祝い金と一緒にくれた物だった。
「そうなのか。遠いからここにもあまり来れなくなるのか」
寂しくなるなと、叔父さんはポツリと呟いた。その言葉に僕は、期待をしないようにと弾みそうになる気持ちを抑え込む。深い意味合いで言ったわけじゃないはずだ。単に今まで可愛がってきた甥っ子が、遠くに行くから哀愁に浸っているだけの事だろう。
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