優しいおじさんに見えた!

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優しいおじさんに見えた!

 まだ、蝉がないている八月の暑い日。  こんな暑いのに、自転車で気晴らしに近場をサイクリングしようと思い立った私。  また、何故だか、あまり通らない道を行こうと思い、ハンドルを左に切りました。  すると、急な坂!  あーっ 見るなり、一瞬、怯みました。    傾斜は30度くらい。  6段ギアはついているけれど、所詮、ママチャリだから、キツイかも……と思い、戻ろうかとも思いました。  でも、戻ると何かに負けた気がして、その何かはわかりませんが、このまま突き進むことにしました。  一ギアにして、ゆっくりゆっくり、汗だくになりながら、全体重を自転車のペダルに乗せ、ギコギコ漕いで登っていく私。  でも、坂の中腹あたりから、苦しい……ギブアップ!    この方が負けた気がするのですが、そこは思わず、自転車から降り、引きずって上がろうとした時です。  横から見知らぬおじさんが「この坂をこれで登るの大変だよ」と話しかけてきました。  さっきまで誰もいなかった坂道  どこからともなく現れたおじさん。笑いながら立っています。  今までだったら、嘲笑されて、バカにされてるって!  「大きなお世話」と思いながら、ムカついていた私だったかもしれない。  でも、全然その日はそうは思わなかったのです。  言葉のまま「大変だよ、大丈夫?」って気遣ってくれていると思えたのが不思議でした。  そして、おじさんに対して出た言葉は 「ありがとうございます」でした。  気遣ってくれてありがとうと素直な気持ちで口に出ていました。  坂道を登り切ったあたりで、振り返ると、あのおじさんがまだ立っていました。見守ってくれていたのだと思い、また、ありがとうと手を振りました。  事象は一つ。  でも、感じ方は複数。  感じ方次第で、こんなにも、心が豊かになったり、ムカついたり選択する人間の心の不思議さを感じだ日でした。      
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