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転勤先を知って驚いた。
「え? そこってヒデくんの実家があるとこじゃない?」
「そうなんだよ。だからさ、美宇…君さえよければ、引っ越さないか?」
「えっ!?」
実家のあるところへ引っ越す。
それは、義母の直美と同居することを意味する。
「うーん…」
美宇は迷う。
直美に問題があるわけではなく、英明とふたりだけの時間が減ってしまうことを心配していた。
(でも同居したら、家事とか手伝ってもらえるかもしれないよね。子どもができた時も安心だろうし…よしっ)
ささやかな打算が、決断の決め手になる。
彼女はあくまで渋る態度をとりつつも、英明にこう告げた。
「わかった。ちょっと不安だけど、ヒデくんがそう言うなら」
「よかった! ありがとう、美宇。あそこは自然が多くて暮らしやすいし、君にもいい影響を与えてくれるはずだよ」
「…そう、だね」
美宇の表情がわずかに曇る。いい影響を与えるという言葉が引っかかった。
どうやら英明は、自然の多い場所に行けば簡単に子どもができると考えているらしい。
(もしかしたら、そこまで深く考えてないのかもしれないけど…)
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