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北くんとは、もう5年くらいの付き合いになる。
中学校で初めて一緒になって、そこから学年が変わっても、高校に入っても、北くんとはまさかのずっとおんなじクラスだった。
帰る方向も一緒で、趣味という趣味がないことで逆に気が合い、意気投合した僕と北くんはそれからいつも一緒だった。
もう部活とかしんどいな、と言いながら一緒に帰宅部を選択した時も、年配の先生に南北コンビ、というクソダサいあだ名で呼ばれる時も。
平日も休日も、雨の日も晴れの日も。
当たり前みたいにいつも一緒だった。
そこから、いつの間にか北くんのことをそういう、好きだとかそんな気持ちで見るようになっていることに気付いて。
北くんの傍で少しずつ少しずつ育っていく愛情は、隠すのも段々としんどくなっていた。
でももちろん、好きだなんて言えるはずもない。
けど、北くんの笑った顔も、めんどくさそうな顔も、隣に並ぶと微かに触れ合う肩も。
多分もう、このまま抱えていくにはだいぶギリギリのとこまで来ていた。
遅かれ早かれ来る、北くんが僕の隣からいなくなる日。
僕は叶わない想いに苦しむのだろうか。
それとも、これでやっと楽になれると安心するのだろうか。
それでも、このちょっとだけ笑うような北くんのいつもの笑顔が、僕以外の誰かに向けられるんだと思うと、それはとても淋しい以外の何者でもなかった。
「……ほんならさ、僕も一緒に考えたるわ。北くんの記念すべき初デートプラン」
「お、さすが南。ほんま話わかるヤツやな」
北くんの小さい笑顔に、僕もいつも通りの笑顔を返す。
「そりゃ、北くんのためやから、全力で応援するよ。なんか行きたいとことか考えてるとことかある?」
「……んー……、特にないけど……。……おっぱい……」
「そこから一旦離れろや。いきなりおっぱいメインのデートてなんやねん」
「んー……、ほんなら……、……浮かばんなー……」
北くんはカッコいい。
カッコいいけど、こういう残念なところも多々ある。
何を考えてるのか良くわからないところもあるが、そんな時は特に何にも考えてないことも多いのが北くんである。
「もうええわ。僕ねーちゃんとかにも色々聞いて考えてくるから、北くんもなんか良さそうなとこあったら考えといて」
「ん」
「おっぱいは一旦置いといてな」
「……ん……」
北くんは基本めんどくさがりで、難しいことを考える時にはだいたい渋い顔になる。
今ももう空っぽになったパックのストローを弄ぶみたいに咥えながら渋い顔をしているとこを見ると、多分まともなデートプランなど考えては来ないだろう。
もー、しゃーないな、なんて言いながら僕は、自分のこの気持ちに区切りを付けるためにも北くんのこのデートを成功させなければ、とそんな気持ちを密かに抱いていたのだった。
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