不思議玉手箱 短文集

3/5
前へ
/5ページ
次へ
川べり、桜流し。陰惨なことが在りました。ゆめさかさ。夢から醒めるように、ここにいます。古い柱時計は縛っておいたからね。動かないように。動いたら、あなたは死んでしまうから。遠くで、昔の人が呼んでいます。街角から、ひょいと顔を見せて。やあ、随分昔に亡くなった人だけど、懐かしくて、会いに来てしまったよ。さあ、帰るんだ。ここは危ない。貴方は私を追いやって、川の向こうで手を振っている。もう来るんじゃないぞと。 足の爪が、黒ずんでいる。悪いことをしたから…ではなく、ベッドの角にぶつけたのです。でも…なんだか、悪しきものがとりついているみたい。黒虫。赤虫。黒鬼、赤鬼。しゃれこうべ、あめふらし。 黄金色の夕暮れ。神様仏様。祖母を殺す夢を見てしまったことは黙っておいてください。逆さの仏陀が白と黒の反転した瞳で、こちらを睨んでいる。通りを横切る黒猫。通り魔。屋根の上のカラスたちの、赤い光る眼。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加