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隠しごと
「ただいま」
「お帰り」
理人がリビングに入ると同時に、晶はパソコン画面のウィンドウを落とした。
「何? 仕事?」
「そう。新商品の案練ってた」
理人の妻の晶は、お菓子メーカーの商品開発部に勤務している。
「今度はどんなお菓子作るの?」
パソコンを覗き込む理人の顔を押し戻し、「だぁめ」と晶は笑顔で睨む。
「企業秘密ってやつか」
悪戯を注意された子どもみたいに、理人が「ちっ」と舌を鳴らした。
「ふふっ。ご飯は? 食べる?」
腰を浮かせる晶に「いや」と理人が声をかける。
「大丈夫。食べてきたから」
「そう。じゃあお風呂入っちゃって。私、キリがいいとこまでやっちゃうから」
パソコンを指で叩き、晶は椅子に座り直した。
「わかった。じゃ、お先」
「はぁい」
右手をひらつかせ、晶が理人を見送る。
リビングを出たのを見届けると、晶は再びウィンドウを開いた。
「危ない危ない。こんなのバレたら大変」
小説投稿サイトの入力画面を見ながら、晶は胸を撫で下ろした。
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