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───同じく『ヌルポイント』の一所。
何かを観測するように鋭い顔つきをしていた男が、不意に頬を緩めた。
どうやら、何かしらの現象に期待通りの結果が得られたらしい。
「どうですか?中々の迫力でしょう」
右目に片眼鏡を掛けた男。カプリコーンは、隣に立つ男に問いかけた。
「神の使い魔、だったか。なるほど、どうやら名前負けはしていないようだ」
その男。墨桜京夜は、淡白な口調で答えた。
「どうやら上手くいったみたいですね」
と、そこに左目に片眼鏡を掛けた男が合流した。アリエスである。
彼の表情を眺め、カプリコーンが口を開いた。
「何か良いことでもありましたか?」
「ええ、予想外の収穫がありましてね」
アリエスは浮ついた表情で歩を進め、カプリコーンと自分とで京夜を挟むように陣取った。
お互いの顔が辛うじて認識できる薄暗がり。
どこに存在するのかもよく判らないその場所に、肉食獣の唸り声のような音が響く。
まるで洞窟の中にいるように、その音は四方八方から聞こえてくる。
同時に、ガチャガチャと固定された鎖を乱暴に引っ張ったかのような金属音が響いた。
じゅるじゅると涎を連想する音も聞こえてくる。
「活きがいいですね。これは、私たちの出る幕は無いのでは?」
「十二分にあり得る話ですね」
暗がりに、二種の片眼鏡が鏡合わせで光った。
「陸獣、か・・・」
視線を動かし、京夜が呟く。
三人を囲む闇の中には、ギロリと睨む、怪しい光を纏った幾つかの眼が。
不規則に、それでいて規則的に浮かび上がっていた。
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