RE:ENGINEERING

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RE:ENGINEERING

「なんだ、透灰。もう呼んでくれたのか」 食堂にやってきた男。西の親「玄」の担当教師である中年男性は、李空に向けて何食わぬ顔で呼びかけた。 身に覚えがなかった李空は、不思議そうに首を傾げる。 「なんだ?俺の顔に何かついてるか?」 李空の反応に、中年教師は訝しんだ様子を見せる。 李空が七菜に目をやると、七菜も心当たりがないようで、かぶりを振った。 「・・・・・あ」 その直後、李空は思い出した。 授業終わりに中年教師が何か言っていたことを。 上の空で聞いていたため記憶からすっかり抜け落ちていたが、中年教師は七菜を食堂に連れてくるように李空に頼んでいたのだ。 李空を呼び出すに当たって七菜が食堂を選んだのは、前に李空に学校案内をしてもらった時に訪れたことがあったからであるが、偶然にも中年教師が七菜を呼び出した場所と一致していたわけだ。 それにしても、接点がないはずの七菜を中年教師が呼び出した理由と、その場所に食堂を選んだ理由は不明であるが。 「何か手違いがあったみたいだが、まあいい。二人とも付いてきてくれ」 中年教師が向かったのは、食堂の脇にある非常口であった。 李空と七菜は、少し戸惑いながらも後に続いた。 「よっ」 中年教師がポケットから『鍵』を取り出す。 到底自然のものとは思えぬ、滑らかな材質でできた真っ白な『鍵』であった。 鍵穴に挿入し、右に回す。 それからノブを降ろすと、中年教師はドアをした。 「この扉は本来開き戸だが、この鍵を差し込むことで引き戸に変わる。その際に、この『ゲート』は初めて開かれるってわけだ」 その先には、零ノ国や仙人の家で見た、禍々しいオーラを放つゲートが続いていた。 「なるほどそんなギミックが・・。非常口なのになんで鍵口があるんだって、前々から疑問だったんですよ」 「ほう、気づいていたのか。なかなか良い目をしてるな」 李空の言葉に、中年教師は目を細めた。 「昼間は騒がしいし、放課後は誰もいない。物を隠すなら最適の場所だろ」 「確かにですね。それにしても、このゲートはどこに続いてるんですか?」 「付いてくればわかるさ」 中年教師はゲートを潜っていった。 七菜が李空に視線を送る。 少しの間があって、李空がコクリと頷く。 二人はゲートに足を踏み入れた。
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