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一方その頃。
大陸の一所には、活気に満ちた力強いエネルギーが集う天幕があった。
簡易的に設置されたその天幕があるのは、零ノ国会場に居た者たちが飛ばされた地上に当たる場所である。
どれもこれも一級品の、研ぎ澄まされた才が放つエネルギー。
その正体は、各国代表の将であった。
熱狂から一転。混乱で幕を閉じた大会から一夜明けた今日。
うっすらと顔を出した未知の脅威への対策会議として、各国の将はこうして一堂に会したのだ。
「流石は一国の代表が将たち。迅速な対応を感謝するぞ」
ぐるりと見回して言うのは、伍ノ国代表将。バッカーサである。
天板が円形の座卓を囲む将たち。その一つであるバッカーサの背後には、伍ノ国代表の頭脳役。キャスタの姿もあった。
バッカーサの失言を危惧しているのか、長い金髪で隠れていない方の眼で、鋭く睨みを利かしている。
次いで、伍の左隣。
バッカーサの隣で胡座をかく陸ノ国代表将。ゴーラが口を開く。
「つい昨日まで互いに鎬を削っていた俺たちが、こうして一つの卓を囲むとは。未知の脅威を前に団結できるのは、強き種族の証だな」
「一人勝ちしそうな奴がいれば共通の敵として皆に狙われる。それがゲームの鉄則というものだ」
そんな風に口を挟んだのは、弐ノ国代表将 ワンであった。
二人の言葉を聞き、参ノ国代表将 アイ・ソ・ヴァーンがふっと笑う。
「全く。将ってのは暑苦しい奴が多いな。頭ってのは常に冷静であるべきだ。お前もそう思うだろ?壱の将」
「・・ん?ああ、せやな」
話を振られた壱ノ国代表将。軒坂平吉が、少し遅れて頷く。
それから、机を挟んで正面に視線を向けた。
「冷静な将代表は未だ目を覚まさずか・・・」
本来、そこには肆ノ国代表将 セウズが居るはずなのだが、そこに彼の姿はなかった。
セウズは、零ノ国会場に乱入してきた男に杖で胸を貫かれ、そのまま意識不明となったのだ。
容体を確認した借倉架純曰く、セウズが意識を失った原因は「才」らしい。
その根拠は単純明快。セウズには外傷がなかったのだ。
貫かれたはずの胸からは、一滴の血も滴れてはいなかった。
となれば、要因は才であると考えるのが妥当だろう。
「目を覚まさぬ我が国将に代わり、及ばずながら、私マテナが代理を勤めさせていただきます」
平吉の正面には、凛と背筋を伸ばす、肆ノ国代表 マテナの姿があった。
彼女も架純との勝負にて意識を失っていたが、既に目を覚ましたようだ。
「頭数は揃ったようじゃな。では、早速───」
「議題に移りましょう」
バッカーサの言葉を遮るかたちで、背後のキャスタが進行役を乗っ取る。
バッカーサは不満そうにしていたが、彼の無茶な言動を知る他の者たちは、誰一人として抗議の声を上げることはしなかった。
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