AFTER CLOUDY

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───はてさて、こちらは六国の将が集う天幕。 その中では、伍ノ国代表キャスタを中心に会議が進んでいた。 「それでは、『零ノ国』と『央』は反転したと、そういうことだな」 「はい。そうなりますね」 キャスタの問いかけに答えたのは、『TEENAGE STRUGGLE』にて、壱ノ国代表の零ノ国案内人役を担っていた、コーヤであった。 どうしても伝えておきたいことがあると、この天幕を訪ねてきたのだ。 彼は、各国代表たちと同様、零ノ国会場から地上に飛ばされた際、自身の才『千里眼』によって地下の様子を覗いていた。 して、そこにあった光景は驚くべきものであった。 なんと、「央」の立派な街並みが、そっくりそのまま地下に沈んでいたのだ。 地下にいた者たちは地上に。地上にいた者たちは地下に。 文字通り「零ノ国」と「央」は反転したと言える。 「そういや、美波も似たようなこと言いよったな」 平吉が何かを思い出したように呟く。 平吉一人を残し、壱ノ国代表の面々が壱ノ国に帰る時、美波は「地下に才の反応がある」と言っていた。 コーヤの証言と合わせて考えるに、その才は「央」に住む貴族たちのモノであったのだろう。 「つまり、今俺たちが居るここは『央』があった場所。しかし、街や人は地下に沈み、城壁は消え去ったと」 「これが奴らの仕業となれば、相当な脅威だな」 ヴァーンとゴーラがそれぞれ口にする。 これらの現象が、零ノ国会場に現れた男たちによるものなら、それは大陸全体の危機に直結する。 つまりは、あの男たちは六国共通の脅威であるというわけだ。 「うむ。どうやら、我ら六国は今こそ手を組まねばならぬようだな。どうじゃ?六国で正式に同盟を結ぶというのは」 腕を組むバッカーサが、ぐるりと見回して言う。 将たちは互いに顔を見合わせ、それから揃って頷いた。 「決まりのようじゃな」 バッカーサが満足げに頷く。 「そうと決まれば、名が欲しいのう。・・そうじゃ。『TEENAGE STRUGGLE』優勝の品として、壱の将に命名権を与えるというのはどうじゃ?」 バッカーサの意見に、他の将は満場一致で同意を示した。 「えらい安くついたもんやで」 平吉はため息をつき、肩をすくめる。 死闘を制し優勝を掴んだと言うのに、「央」ごと貴族 が消えた所為で、約束の報酬は得られていない。 その代わりが同盟の命名権というのは、あんまりな話であった。 「まあええわ。せやなあ。六国、同盟、才・・・」 ボソボソと呟きながら頭を捻る平吉。 やがて考えがまとまったのか、平吉は皆に向けてその名を発した。 「『サイコロ』。これが六国同盟の呼称だ」
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