皆、順番に良い子で待ちましょう。

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あくる朝、ロゼッタはけたたましいベルの音で目が覚めました。 何事かと飛び上がると、入り口に割烹着を着た肉付きの良い中年の女性が腰に手をやって険しい顔をしながら立っていました。全員が起き出した事を確認すると、女性は後ろで鳴るベルを止めました。そして、着替えを終えた者から順番に、彼女の後に続いて部屋を出て行きました。 「おい、早くしないと、朝ご飯を食いっぱぐれるぞ」 気が付くと行列を見送るロゼッタの前に、遮る様に彼女とそれ程変わらない年頃の少年が立っていました。 着替えはベットに備え付けられた小さなテーブルの上に用意されていました。 それにいそいそと着替え始めると、少年は背中を向けて、彼女が着替え終わるのを待って居ました。 「早く、行くぞ」 少年に手を引かれて、慌ててロゼッタはセンドを掴みました。ぎゅっと抱きしめる様子を少年は横目でちらりと見て、直ぐに目線を元に戻しました。 少年に案内されて到着したのは食堂でした。 先程の中年の女性が皆に食事を配っています。 二人もその列の最後に加わりました。 食事を貰う時に、中年の女性に「おもちゃを食事をする所に持ち込んではならない」とロゼッタが持っていたセンドを取り上げようとしました。彼女が咄嗟に嫌がる素振りを見せると、女性は激高して、平手を振り下ろしました。バシイ! と鋭い音が食堂に響き渡りました。 「どうして、お前が庇うのですか!」 「申し訳ありません。この子は昨日、入ったばかりで、ここの決まりを知りません。如何か、今日は僕に免じて頂けませんか?」 叩かれたのは少年でした。その姿を周りの子供達は只、虚ろな目で眺めていました。激高していた女性も「仕方ないですね。今日だけですよ」と急に平然とした態度に戻りました。 ロゼッタは驚きと恐怖で口をパクパクさせていました。 (行くぞ) 少年は小声でロゼッタの手を引っ張って、テーブルに着きました。 「それでは、皆さん。今日も、神に感謝して、美味し糧を頂きましょう」 中年の女性がそう号令を掛けると子供達は一斉に「美味し糧を」と唱えて、食事をし出しました。 (待て!) ロゼッタが食べ物を口に運ぼうとした時でした。少年は周囲を見渡しながら、その手を止めました。ロゼッタも彼と一緒に周囲を密かに見渡しました。すると、スープを飲んだ子供達の口元が一瞬だけぴくぴくと動きました。それを見た少年は小さく「今日はスープか」と呟きました。 (良いか。今日のスープは二口だけ飲んで、後は残すんだ) (どうして?) (良いから、言う通りにしろ) 言われた通りに、ロゼッタはスープを二口だけ飲みました。とても甘くて美味しいコーンポタージュだったので、本当は全部飲み干してしまいたかったのだけれど、膝の上に置いていたセンドも周囲に分からない様に彼女を諫めました。
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