皆、順番に良い子で待ちましょう。

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「ねえ、アレはなんだったの?」 食事を終えると、次のお昼ご飯迄、自由時間だと言われました。外の広大な芝生の上で鬼ごっこをして遊ぶ者や縄跳びをする者等、皆、思い思いに振る舞っていました。食堂で見た様な異様な静けさはありません。二人は大きな大木の木陰に座って、本を読むフリ(・・)をしていました。 「僕たちの食事には洗脳する為の薬が入ってる」 少年の言葉は衝撃でした。驚く彼女に少年は目線を本からずらすなと言いました。 「あそこで遊んでる子達だって、今はああだが、何れ自我を失う。失えば、この施設の思うように扱われて、最終的には殺される」 「殺されるってどういう事?」 「ここは何不自由なく暮らせるが、外に出る事は出来ない。出れば確実に死ぬだろうし、捕まってしまうだろう。自我を失う迄、思う存分好きな事だけ出来る場所さ。それに、ここでは食事を残しても誰にも文句は言われないし、怒られない」 「どうして? 従わせる為には全部の食事を食べさせた方が良いじゃない」 「子供はいくらでも、()から攫って来れるから良いんだよ。それに、あいつ等は僕が薬に感づいてる事に気付いてるけど、今の所何もしてこない。僕が他の奴に触れ回るつもりが無い事やそれをしても意味が無い事を奴等は知ってるからだ」 「どうして、意味が無いの?」 「最初に薬入りの食事を全部食べてしまった子はそれが良くない物だと知っていても、依存して食べてしまうんだよ」 ロゼッタは少年に言われて、あのコーンポタージュの事を思い出しました。確かに、物凄く美味しくて、二人が止めてくれなければ全部食べていたに違いありません。 「ねえ、外には出られないって、どういう事? どうにかして、隙を見つけられたら、外に出られるんじゃないの?」 その質問に少年は指を差しました。その方向には門が有ります。 「ここは広大な土地に見えるかも知れないけど、そうじゃない。ここは亀の背中の上にあるんだよ」 「え?? か、亀?」 「そうだ。あの門の先はね、海があるんだ。海には巨大なナマズが住んでる」 「何を言ってるの? ナマズは河に居る魚よ」 ロゼッタは少年がからかっているのかと思ったが、どうやらそうではないらしい事に気付きました。 「ようやく気付いたかい? 此処は僕達が居た世界じゃないんだよ」 少年がそう言うとお昼の時間だと先程の中年の女性が皆を呼びに来ました。
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