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痩せ細った身体は硬直と痙攣を繰り返しながら徐々に弱っていき、五分ほどで完全に動かなくなった。
ふと足元に目をやると、爺さんが漏らした小便の小さな水たまりの表面で月光が揺らいだ。
目撃者は今宵の月だけだろう。鶏たちは夜目が利かない。
さて、夜が明けるまでにもう一仕事。
「キミたち、ごめんね。ちょっとお家を動かすよ」
僕は二羽の鶏にそう言うと、高床式の鶏小屋を四台のジャッキで更に数センチほど地面から持ち上げ、四方の足にそれぞれ滑車を取り付けて移動させた。
鶏小屋のあった場所の地面にシャベルで深く大きな穴を掘り、そこに変わり果てた姿の爺さんを転がした。出刃包丁も一緒に放り込んで土をかぶせると、鶏小屋をまた元の場所に戻した。
爺さんの体積分の土が余ってしまったが、家庭菜園でも始めようかと思っていたからちょうどいい。僕の大切な鶏たちに新鮮な野菜を食べさせてあげよう。
やがて西の空が明るくなり始め、庭の二羽の鶏は高らかな声で朝の訪れを謳歌した。
その鳴き声は心なしか、僕にはいつもより朗々として聞こえるのだった。
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