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私は今、メレンゲを作っている。それが街を覆っている泡の正体。
まさか、お菓子作りをしているだけでこんなことになるとは思ってもいなかった。
前も後ろも右も左も、全てが泡に覆われている。唯一分かるのは上下だけ。重力のおかげでそれだけは、普段と変わらずに分かる。
「どうしようかしら」
ボウルの中の卵白を泡立てながら呟く。
ネットで調べた通り、大きなボウルに氷水をいれ、そこに卵白の入ったボウルを入れて泡立てている。
電動を使いたかったけれど、買いに行くのが面倒だったので、使っているのは100均のホイッパー。
メレンゲ作りはなかなか上手くいかない、と聞いていたのだけれど、私には才能があるらしい。だって、初めてなのに街を覆うほどに膨らませることに成功しているのだから。
「パティシエにでもなろうかしら」
小さな頃に思い描いた様な気がする夢を口にした。
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