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真実を知ったのは、最近だった。
何で5年も一緒にいて真白の嘘に気づけなかったんだろう?
ようやく探しあてた、いや、やっと真白の友達が教えてくれた真実。
『真白はあれから上手に笑えてないの』
そういえば最後に見たあのバツの悪そうな笑顔もまた諦めの表情だった気がする。
気付けなくて、ごめん。
小さな花屋さんで働くその人に。
「薔薇を30本下さい」
目の前でそう告げたら俺の顔を見て泣き出した。
真白の誕生日30歳の日のこと。
泣きながらも。
「ご自宅用ですか?プレゼント用ですか?」
「プレゼントにして下さい、誕生日なんです、彼女の」
微笑んだ俺に真白はやっぱり困り果てた顔をして薔薇を包みだした。
店内には真白一人だったから。
「元気だった?」
「……、うん、青也も、元気?」
ポツリポツリ、他の誰もいないのに。
小さな声で話す俺たちは、お互いに次の言葉を探し合う。
「全部、友達に聞いて」
「……、やだなもう、親友辞めようかな」
ハハハっと力無く笑う真白に首を横に振る。
「全部嘘じゃん、好きな人とか」
「もう、できた、本当だよ?」
「多分できてない」
「できたもん、多分」
俯いた首の白さや薔薇を包む指先の細さ。
そういうの全部が色になって心に沁みわたり甦る。
この一年間少しずつ薄れていた真白の色。
あの日。
プロポーズした日、喜ぶ真白に。
『子供は3人ぐらい欲しいな』
自分が兄弟が多かったから、兄弟多い方が楽しいよね、って深い意味もなく放った俺の言葉に。
『そうだね』
と相槌を打って。
笑ったはずの真白は本当はきっと泣いてたんだ、あれからずっと。
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