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「全部、聞いてるの?」
「まあね、真白の荷物送ったら宛先不明で戻って来て、まずそれにビックリした……、焦ってみっちゃんに問い合わせたのが最初」
「送ってくれたんだ」
「捨てようかなって思ったけれどさ、まだ家にあるよ、大丈夫。真白だって俺の荷物送ってくれたでしょ、だから」
真白は気まずそうに俯いて笑う、きっとずっとこんな風にあの日も遠慮がちに笑ってたのか。
真白がそんな思いをすることは何一つないのに。
俺の目をじっと見上げた真白は、震える唇を小さく開いた。
「高校生の頃に、」
「いいよ、言わなくて、少しは聞いてるから」
「私、流されてたの、雰囲気に。やだって言えなくて」
「真白」
「赤ちゃん、出来たって、パニックになって、それで」
「真白、って!!!」
震えながらボタボタと泣き崩れる真白をギュッと強く抱きしめた。
俺がプロポーズをした後に真白は一人病院へ行ったのだという。
「そのせいで赤ちゃん、出来ずらいんだって、苦労するよって、医者がね」
「うん」
「そうしたら、青也が望むような結婚生活にはならないし」
「……、ごめん、俺が軽率すぎた」
「違うよ、青也のせいじゃない、自分のせい。本当は青也と付き合うこと自体ダメだった。わかってたはずなのに……」
何だよ、それ。
付き合うこと自体ダメだなんて自分でそんな風に責めてたの?
俺の胸の中で泣きじゃくる真白の震えをどうしたら止められるのだろうか。
心まで全部温めてあげたいのに、その術がわからない。
「自分のせいで小さな命を奪ってしまったのに私一人幸せになんてなれなかった、なっちゃいけなかったの」
こんなにも色とりどりの花に囲まれながらも真白はずっとモノクロの世界で暮らしていたんじゃないだろうか。
あの頃よりも細く頼りなげな身体を支えるように抱きしめたままで。
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