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「この町、すごく遠いよね」
突然の会話の流れを止めるような俺の言葉に真白は不思議そうに顔を上げた。
「だって俺の住む駅から3本乗り換えなきゃって、遠すぎない?」
「……できるだけ、青也の住むところから遠くに、ってそう思ってたから」
「ふ~ん、俺と顔合わせないように?」
困ったように頷いた真白に追い打ちをかけてしまうかもしれないけれど。
「5年も付き合ってたのに俺ってそんなに信用なかった?」
「……、違う、違うのっ、青也に言うのが怖かった、……」
自惚れてもいい?
俺に嫌われたくなくて、そう聞こえた気がした。
ちょっと意地悪な話ばかりし過ぎたのか、真白がもう一回り小さくなったように感じる。
ごめん、そんなつもりじゃないんだ。
「教えてよ、真白。今、好きな人」
「え?」
「本当にもう他の誰かのこと好きになっちゃった?」
諦めたかのように真白は微笑んで。
「もう誰も好きにならないって決めてるの、」
涙目で微笑むなんて、しぶとくてズルくて愛らしい。
愛しい……。
「そうなんだ? 俺は真白以外どうやって好きになったらいいのか未だにわからないでいるのに。真白だけそれはズルイよ」
うっと言い淀んだ真白に微笑んだ。
「あの日本気で真白に殺されたし、俺」
「え?!」
「心がもうさ、全部全部感情無くなっちゃったみたいで立ち直るのにどれだけかかったのか」
「っ、ごめんなさい」
「いいよ、謝らないで。その代わり、もう一回真白にプロポーズできるまで勝手に距離縮めさせて貰うだけだし」
友達から太鼓判押して貰ってなきゃ、これはただのストーカーだと思われるけれど。
違うんだ、ちゃんと聞いてる。
『真白、酔っぱらうと青也くんの名前口に出して未だに泣くの、青也くんは? もう真白のこと好きじゃない?』
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