青也

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 家に着いてすぐにシャワーを浴びてから。  燃えるゴミの袋を一枚手にした。  真白の着替え、歯ブラシ、愛用の石鹸やシャンプー、おおよそ男の俺には必要のないトイレに置いてあったもの。  玄関には白いコンバースが二足並んでいる。  その小さいサイズの方も大きい自分用のも一緒に袋につめ込んだ。  まだ一度しか履いてなかったけれど、同じ日に二人で気に入って買ったお揃いのものだったから。  ああ、そうだ、夏用のスリッパや彼女の愛読書と枕もだよね。  目についた真白のものすべてを片っ端から処理をしてく。  その内、袋がパンパンになってきたのに気付いてやっと手を止めた。  何やってんだろ? 今すぐにやらなくてもいいっていうのに。  袋の口をギュッとむすんで、置き場所に困りひとまずクローゼットの隅に置く。  完全に頭に血が上っているようだ。  冷蔵庫のペットボトルの水を取り出して、額にペタッと充てた後で。  ベッドに寄りかかりながら飲んでいると。  目の前に広がる自分の部屋の風景の中に真白の持ち物が見えなくなっていることに違和感と。  それからなぜか妙な安心感を覚えた。  いなくなっちゃえば、いいよ。  真白なんか、いなくなっちゃえば。  このまま俺の目の届かないところに消えてしまってくれたなら、楽になる。  それでやっと気がついた。  自分の心がおかしいことに。  あんなに泣いたせいなのか、それともゲリラ豪雨を避けずに歩き続けたせいなのか。  真白のせい、なのか。  何も感じないんだ。    
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