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それから数日かけて私がしたことは。
青也が私の部屋に置いていたもの、スーツとパソコンと髭剃りやお風呂場にあったシャンプーや。
小さな一つの段ボールに詰め込んで青也の家の住所を書いた。
一度だけ、もう一度だけ青也のことを感じてみたくなって。
抱きしめたスーツから、青也の匂いがして。
涙を付けないように皺にならないようにと大きく畳んで大切に詰めた。
それだけは他のダンボールとは違う場所に置く、見分けがつくように。
見回せば私の部屋は段ボールだらけだ。
あなたと一緒にいた思い出だらけの部屋はもうすぐ空となる。
会社も今月末まで、私はあなたの知らない場所で暮らすんだ。
もう二度と誰も好きにならないように。
静かに静かに時間だけ流れていくような穏やかな場所で。
幸せに浮かれていた頃の自分が滑稽で仕方がない。
自分なんかが幸せになどなれるはずがないでしょ。
青也は幸せになってもいい人で私はだめな人。
本当は最初からわかっていたはずなのに。
『真白とまた会いたい、二人で』
友達の友達の、その友達が青也だった。
お互いの友達と一緒に行ったライブハウスで知り合って何度か4人で会ってた。
会うたびに青也に惹かれてるのは自分でも気づいていたし、だけど片想いならば許されるだろうって自分で自分の想いにブレーキかけないままでいたのに。
『オレじゃだめ? 真白が好きだった、最初からずっと』
私の写真を見て一目惚れしたんだって。
だから友達二人は最初から共犯者。
だめなわけがない、青也がいい、その気持ちを止められなくて。
青也を受け入れてしまった。
あんなに私に優しい人、きっと二度と現れない。
自業自得だ。
ポッカリと心に空いてしまった穴を埋めるものなどなくて。
その部分だけ真っ黒になってしまった私の心、泣き疲れて諦めがつき枯れてしまったようだ。
心が死ぬってこんな感じなんだろうか。
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