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翔太も結芽も、どちらかと言えば魚より肉のほうが好みだ。つまり、この家が魚臭くなることはない。
翔太の脳裏に浮かんだのは、先日結芽を水族館へ連れて行った日のことだった。
彼女は海の生き物、特にペンギンが大好きで、たくさんのケープペンギンやフンボルトペンギンが泳ぐ姿を見て、子どものようにはしゃいでいた結芽を、彼は今でも鮮明に覚えている。
そのときに「やっぱりペンギンってかわいいな~。いつかは飼ってみたい」とつぶやいていたのも覚えている。
同棲して2年。彼が『結婚』を意識していた矢先のことだった。
これからもずっと一緒になるのだから、お互いできれば隠しごとはしたくない。翔太はそう考えていたのだ。
しかし、間違いなく結芽は隠しごとをしている。そして、彼女の不審な行動や最近のできごとを合わせてみれば、なにを隠しているかはだいたいの見当がつく。
『ペンギンを飼い始めた』ということだ。
当然ながら、そのことについて翔太は一切なにも聞いていない。
ペンギンってそもそも飼えるのか。
飼えるとしても、ペットとして人気な犬や猫よりもずっと高いはず。
そして、エサ代だってすごく高いはず。
だとしたら、いったいどこからそんな大金を手に入れたのか。
答えに対する疑問は数あれど、なんの相談もなしに勝手に決めていたことに、翔太は落ち込んでしまった。
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