令嬢は裏切りを知る

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令嬢は裏切りを知る

「だからあの子……トイニに、罪を着せてしまえばいいのよ」 「それはいいお考えですわ、エミリー様!」 「ふふ。王子の怒りを買って平民に落とされても、あのどんくさい子なら平気そうですしね!」  ……皆様ごきげんよう、私はトイニ・ケスキナルカウス子爵令嬢。  エミリー・ギャロワ公爵令嬢に今まさに罪を被せられようとしている、名前がちょっとややこしいことだけが特徴の貧乏子爵家の娘ですわ。  ――テンパっていいところのお嬢様ぶってしまった。  これはまずいな。  ここは十五歳から十八歳までの貴族の令息令嬢たちが通う『王立アシャール学園』。  私もその生徒の一人だ。国内の貴族の子息子女が集まる学園は貴族社会の縮図であり、そこで人間関係の構築を――まぁ要するに『いいとこのお嬢ちゃん、お坊ちゃんと繋ぎを作ってこいよ。あわよくば家柄のいい男に惚れられてこい』と親に期待され、令嬢たちは学園に叩き込まれるわけだ。  ちなみに学園は王都にあって、ケスキナルカウス子爵家の領地は国の端っこにある。だから私は学園では寮生活を送っている。  学園で、私は婚活以外は上手くやれたと思っていた。  王子のご婚約者である公爵令嬢エミリー様のお取り巻きの一人になり、その後ろで「うふふ」と笑う簡単なお仕事を獲得できたのだ。苛烈な性格のエミリー様はいろいろとやらかしてくださったけれど、彼女を支え、失敗のフォローをし、日々ゴマをすりながら過ごし、早二年と数ヶ月。  この学園卒業も近い時期に、まさか裏切られるなんてな!
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