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「各キャラ共通のプロローグとかどうするんですか?年下のコンサートチューナーで作ってるんですよ」
チャーハンをテーブルの上に置きながら、森山君が抵抗する。
「直せばいいだけよ。それぐらいの修正簡単に出来るわよ」
「ピアノの絵とかもう発注してるんですよ。コンサート会場だってロケハンに行ってるし、イラストレーターさんに怒られるのは僕なんですから」
「じゃあさ、二人が勤める会社を楽器メーカーにすればいいよ。背景のイラスト使えるように設定を直せば済むでしょう」
「ヒロインの設定が変わったら、全部のキャラで修正が出ます」
「このシナリオだけ転職した設定にすれば問題はない」
「一番大きな問題を忘れてませんか?」
「大きな問題って?」
「誰が書くかって事です。頼めるライターはいないんですよ」
「それは森山君が書けばいいじゃない」
「はあ?何言ってるんですか?」
「森山君が書けばいいの」
念を押すようにもう一度言った。
「無理です!僕は素人ですよ」
「書けてるじゃない」
シナリオを森山君の前に置いた。
「無理です」
森山君がチャーハンを食べ出す。
「できるよ。この仕事をしてもう三年じゃない。シナリオを書く腕は自然と身についてるでしょ」
「それを言うなら十年の春川さんの方が書けるでしょう」
「だってこれは森山君が書いたシナリオだから。頭の中にキャラがちゃんといる人が書いた方がいいのよ」
「その言葉、そのままお返しします。ライターさんがいなくてもコンサートチューナーのキャラ、春川さんが書けばいいじゃないですか」
「ダメよ!」
「どうして?」
「だってこっちのシナリオの方が面白いもん!」
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