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森山君がチャーハンの皿から顔を上げて、こっちを見た。
「だってあのプロット面白くないんだもん。ストーリーが書ける程キャラができあがってないんだよね」
森山君のシナリオを読んでわかった。私が書いたプロットはキャラが全然出来上がっていないって。
佐藤さんはそれをわかっていたんだ。だから書けないって言ってたんだ。申し訳なくなる。
「酷いですね。面白くないものをライターさんに押し付けて」
「その時はわからなかったの。森山君のシナリオを読んで、あのプロットがつまらないって気づいたから」
「そんな事言われても困ります」
「二話目まで書いたんだから、森山君は書けるでしょ?年下キャラ」
森山君が考えるようにゆっくりチャーハンを食べる。
私もそれに倣ってチャーハンを食べた。
少し冷めちゃったけど、塩が効いてて美味しい。ご飯もパラパラになる程炒めてある。
「美味しいね」
「そうですか」
不機嫌そうに森山君が言った。
シナリオを書けなんて無茶ぶりをして怒ってるんだろうな。
「前の会社ではパソコンの製造をしていました。俺は開発にいて試作機の組み立てをしてたんです。トラブルが多いんですよ。試作機って。こんなに大変な仕事は他にないだろうなって思ってましたよ」
森山君がため息をついた。
「だけど今のトラブルはそれ以上のストレスです。まさかゲームシナリオを書けだなんて言われるとは思わなかった。大学も理系だったし、文章を書く事はあまり得意じゃないんです」
「そんな事ないよ。森山君のメールとか報告書とか、理論整然としててわかりやすいよ。さすが理系の人だなって思うもん」
「どうしても俺に書かせるつもりですか?」
「申し訳ないけど、頼めるのが森山君しかいないの」
「別に6人のキャラでリリースしなくてもいいじゃないですか。5人キャラがいれば十分だと思いますけど」
「6人でリリースって言うのは決定事項なのよ」
「じゃあ、6人目だけリリースを遅らせて謎のキャラって事にしておけばいいんじゃないんですか?」
「それも考えたけど、今回のは6人同時じゃないとダメなのよ。10周年の記念作品になるから」
森山君がチャーハンを半分残して、スプーンを置いた。
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