2話 無茶ぶり

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「ときめきって何ですかね」  リビングに戻って来た森山君が言った。 「好きな人に胸がキュンってする事じゃないの?」 「春川さんは俺の事が好きなんですか?」 「えっ」  思いがけない質問が飛んで来た。  好きかどうか、キスをされてからずっと考えていた。  私には片思いの人がいて、それは森山君じゃない。  だけど、ラブホに行ったあの夜から気持ちが少し変わって来た。 「嫌いじゃないよ」  まあ、腹も立つけど。 「ズルい答えですね。あの夜もそう言ってましたよね」 「だって、まだハッキリした事はわからないから。でもね、森山君とキスするとときめくよ。多分、それぐらいには異性として好きなんだと思う」 「回りくどい言い方だ。こういう時はハッキリと言って欲しいのに」 「森山君こそ、私の事どう思ってるのよ?」 「それは……」  視線を逸らされる。 「やっぱりはぐらかすじゃない。性欲を満たすだけだって言えばいいのに」 「さっきは腹が立って、勢いでそう言ったんです」  意外な答えにまたびっくりする。 「なんで腹が立ったの?」 「自分でもよくわかりません。でも、春川さんの事は尊敬してますよ」  また思いがけない言葉が出て来た。 「一生懸命だし、トラブルがあっても投げだすような事は絶対にしないし、責任感の強い人だなって側にいて思います。そんな春川さんと一緒に仕事が出来て良かったって思ってます」 「それは、ありがとう」  照れくさい。誉められるとは思ってもみなかった。いつも働かせ過ぎてるから。 「女の下で働くのはやりづらいかと思ってた」 「有能な人の下だったら、男女関係ありませんよ」 「有能なのは森山君の方だよ。今回の事で頼りになるなって感心したもん」 「春川さん、キスしませんか?」 「えっ、なんでこの話の流れでそうなるの?」 「今、そんな気になったから」 「ダメよ。森山君のキスはグラッとするから。上手すぎるんだもん」 「グラッと来るんですか」  森山君が立ちあがって近づいて来た。不味い、余計な事を言った。
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