2話 無茶ぶり

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「ダメよ。今はそういう事をしてる場合じゃないでしょ」 「そういう事ってどういう事ですか?」 「だから、キスとか」  隣に座った森山君の顔が近づく。  ダメ。この状況でキスなんかされたら流される。  あのキスに私は弱いんだから。 「ダメ」  森山君の鼻の頭をむにゅと掴んだ。 「ダメですか」  鼻声で森山君が言った。  可笑しい。笑いが込みあがってくる。  森山君も笑っていた。それから諦めたように私から離れた。 「シナリオどうしますかね」  ゴロンと森山君が床に転がった。その一言で現実に戻される。 「だから、森山君が書いてよ」 「無理ですよ。ラブシーンが書けないんだから」  二人で同時に大きなため息をついた。  そして黙り込む。  壁時計の秒針が進む音が重く響いていた。  気づくと0時を回ってる。終電がそろそろ無くなる時間だった。  だけど帰れない。  森山君に書いてもらうにはどうしたらいいんだろう。  腕を組んで考える。やっぱりあの手しかないかな。
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