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「ダメよ。今はそういう事をしてる場合じゃないでしょ」
「そういう事ってどういう事ですか?」
「だから、キスとか」
隣に座った森山君の顔が近づく。
ダメ。この状況でキスなんかされたら流される。
あのキスに私は弱いんだから。
「ダメ」
森山君の鼻の頭をむにゅと掴んだ。
「ダメですか」
鼻声で森山君が言った。
可笑しい。笑いが込みあがってくる。
森山君も笑っていた。それから諦めたように私から離れた。
「シナリオどうしますかね」
ゴロンと森山君が床に転がった。その一言で現実に戻される。
「だから、森山君が書いてよ」
「無理ですよ。ラブシーンが書けないんだから」
二人で同時に大きなため息をついた。
そして黙り込む。
壁時計の秒針が進む音が重く響いていた。
気づくと0時を回ってる。終電がそろそろ無くなる時間だった。
だけど帰れない。
森山君に書いてもらうにはどうしたらいいんだろう。
腕を組んで考える。やっぱりあの手しかないかな。
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