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「終電なくなりますよ」
森山君が起き上がって、ぽそっと言った。
「タクシーで帰るから」
「じゃあ、帰って下さい。そろそろお風呂入ったりして寝たいんで」
「シナリオを書いてくれるって約束してくれたら帰る」
「だからラブシーンが書けないと言ってるじゃないですか」
「それ以外は?」
「それ以外ですか」
森山君が考えるように下を向いた。
「まあ、書けなくはないと思いますが」
「じゃあ、それでお願いします」
「ラブシーンはどうするんですか?頼めるライターはいないんですよ」
「私が書く」
眼鏡の奥の瞳が大きくなった。
「共同執筆って事ですか?」
「うん。二人で書こう」
森山君に書いてもらうにはこれしか方法がない。
「本気ですか?」
「本気だよ。だって森山君の書いたキャラやっぱりいいもん。私、あの彼とだったら胸キュン書けるよ」
「とんでもない事を考えますね。春川さんは」
「森山君、お願いします。二人でシナリオを書こう」
深く森山君に頭を下げた。
「全く、とんでもない無茶ぶりです」
「お願いします」
「仕方ないですね」
「書いてくれるの?」
頭を上げて森山君を見た。
「書くしかないでしょう。でも春川さんと一緒に書くってのが絶対条件です。裏切らないで下さいよ」
「裏切らないって」
森山君の肩をポンポンと叩いた。
きっと私たちは胸キュンいっぱいのシナリオが書ける。
そんな予感に胸がわくわくした。
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