3話 缶詰になります。

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 はしたないのはわかってるけど、気になって、ドアスコープから外を覗いた。  森山君と新井さんらしき人物が並んで立ってるのが見える。 「差し入れするって言ったでしょう。早速来ちゃった」  新井さんが甘えるように言った。 「ありがとう。栄養ドリンクがいっぱい入ってる」  いっぱい?私には一本だけだった。 「チョコレートもある」 「涼君、好きでしょ」  りょ、涼君!  何その彼氏みたいな呼び方。まさか付き合ってるの?  でも、森山君は彼女いないって言ってたしな。 「うん。甘い物は助かるよ。シナリオ書くと特に欲しくなるから。肩も腰も痛くなるし」 「マッサージしようか。私、大学時代、マッサージ屋さんでバイトしてたから上手だよ」 「悪いよ」 「遠慮はいらないって。涼君をサポートする為だったら何でもするから」 「嬉しい事言ってくれるね」 「だっていきなり畑違いの事をさせられて大変だと思うし」 「そうなんだよ。無茶ぶりだろ?」 「うん。無茶ぶりだと思う。しかも休日もなくて、春川さんとホテルに缶詰めだなんて」 「酷い話だよね」  森山君の相槌に腹が立つ。私を道連れにしたのは自分のくせに。 「なんか由香ちゃんと話してたら元気になった」 「マッサージするよ」 「でも、もう遅い時間だから」 「車で来てるから、終電とか大丈夫だよ」 「ダメだよ。男の部屋に女の子が一人で入るなんて」 「襲いたくなる?」 「うん」 「襲ってもいいよ」  新井さんの発言にびっくり。  なんでそんな事言えちゃうの?信じらんない。
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