3話 缶詰になります。

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「由香ちゃんは面白い事言うね」  森山君の控えめな笑い声がした。 「でも、今は襲う元気がないな」 「じゃあ、気分転換に散歩でもしない?」 「散歩?」 「ずっとホテルにいたんでしょ?」 「うん」 「近くに大きい公園があるよ。夜風にあたって歩くのは気持ちいいと思わない?」 「それはいいアイデアだね。確かにちょっと歩きたい」 「じゃあ、決まり」 「上着取ってくるよ」 「はーい」  森山君が一度部屋に戻った。それから出て来て、新井さんと出かけてしまった。    なんだろう。この面白くない感じ。    それに新井さん、会社の先輩に対してあの親し気な口の利き方は何?  森山君はそれを全然気にしてないし。  やっぱり付き合ってるの?彼女がいないってのは嘘?  でも、新井さんを部屋には入れなかったよね。  彼女だったら入れるよね。  彼女がいたら私とラブホにも行かないよね。  キスも……しないだろうし。  だけど会社の先輩後輩の仲にしては親し過ぎる気がする。    やっぱり彼女?  真面目に見えて複数の女性に手を出すタイプ?   私は遊ばれたって事?    うーん。どうなってるんだ。森山君は。  段々腹が立って来た。イライラする。  森山君に彼女がいようがこっちには関係ないのに。  こんな事考えてないで、お風呂に入ってさっぱりしよう。  もう、森山君の事は考えない。  うん。そうしよう。  ドアの前を離れてバスルームに入った。
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