3話 缶詰になります。

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 バスルームから出て、部屋に行くともう一度インターホンが鳴る。  やっぱり気のせいじゃなかった。  でも、こんな時間に誰?ルームサービスとか頼んでないし。 「春川さん、寝ちゃいました?」  ドア越しに森山君の声が聞えた。 「どうしたの?」   ドアを開けると、森山君が立っていた。 「お土産を買って来たんで」  コンビニのレジ袋を森山君がかかげた。それから気まずそうにじっとこっちを見る。視線が痛い。 「何?」 「バスローブ姿が意外だったんで。お風呂でしたか」 「今出た所」 「丁度いい。一緒に食べましょう。アイス買って来ました」  森山君が勝手に部屋に入ってくる。 「ちょっと、勝手に入って来ないでよ。夜の11時過ぎに許可なく女性の部屋に入るのはどうかと思うけど」  新井さんには注意してたくせに。  なんで私の所には図々しく来るのよ。 「それって誘い文句ですか?」 「はあ?」  森山君は当たり前のようにベッドの上に座り、こちらを見上げて微笑んだ。 「春川さんが言うと何でもエロく聞こえる。その恰好もそそられます」  バスローブ姿があまりにも無防備だった事に気づいた。  慌てて、体を隠すように両腕を胸の前でクロスさせた。  森山君が長い足を組んで、楽し気に笑った。 「襲いませんよ。アイス食べるだけ。こっちに来て下さい」  隣に座れとばかりにベッドを叩いた。 「食べたら帰る?」 「はい」  素直に頷いた森山君がちょっとだけ可愛い。  丁度、喉も乾いてたし、アイスぐらいいいか。
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