3話 缶詰になります。

14/20
前へ
/207ページ
次へ
 森山君の隣に座ると、カップのアイスをもらった。  バニラ味の豆乳アイスだった。 「夜も遅いから、ヘルシーなやつ選んどきました。そういうの気にするでしょ?」 「まあね。100kcal未満というのは優秀ね」 「でしょ」  森山君は同じシリーズのチョコ味のを取り出した。 「チョコ好きなんだ」 「知りませんでした?会社でよく食べてますけど」 「知らなかった」 「俺に全く興味がないんですね」 「新井さんと違って?」  眼鏡越しの瞳が瞬きをした。 「由香ちゃんが来たの知ってたんですか?」 「彼女、間違えて最初は私の所に来たのよね。栄養ドリンク1本恵んでもらったわよ」 「こっちは1ダースでもらいましたよ」  勝ち誇ったように森山君が言った。 「1ダースもらっちゃう程、新井さんと仲良しなのね」 「妬けます?」 「なんで私が妬くのよ」  プラスチックのスプーンでやや乱暴にアイスをすくった。  自分で振っといて何だけど、新井さんの話は面白くない。  親し気な二人の様子を思い出すだけで、胸がムカムカしてくる。 「髪、ちゃんと乾かしました?」  森山君が肩にかかる私の髪に触れた。 「軽く」 「かなり濡れてますよ」 「いつもこんな感じだから」 「春川さん、こっち」  腕をぐいっと引っ張られて、バスルームに連れて行かれた。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

782人が本棚に入れています
本棚に追加