781人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここでお風呂入ろうかな」
バスタブの方を見ながらさらに信じられない事を森山君が言った。
もう、次から次へと心を揺らさないで欲しい。
「ダメに決まってるでしょ!ちゃんと自分の所で入って」
「帰るのが面倒になったんですよね」
森山君が疲れたように洗面台に寄り掛かって、こっちを向いた。
「廊下を挟んですぐじゃない」
「その距離が面倒くさい。今夜は泊めて下さい」
「はあ?狭いシングルベッドに二人で寝るって言うの?」
「ダメですか?」
「ダメ」
「どうして?」
「どうしてって、狭くなるからイヤ。それに私たちはそんな関係じゃないでしょ」
「そんな関係?」
「一緒に寝る間柄じゃないって事」
「つれないな。ラブホに行った仲なのに」
「あれはただの社会科見学!」
「キスもしたのに」
「森山君が勝手にしたんでしょ」
「あの時は春川さんが美味しそうだったから」
森山君がじっと視線を向けてくる。
「今も美味しそうですよ」
「美味しそうって、食べ物じゃないんだから」
「じゃあ好きだって言ったらいいんですか?」
「なっ、な」
なんでそう言う事言うかな。もうっ、森山君のバカ。
頭に来て、そばにあったブラシを投げた。
パシッと森山君が顔の前でブラシを受け取った。
最初のコメントを投稿しよう!