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「危ないな。至近距離で物を投げないで下さい」
「だって困る事ばかり言うんだもの。腹が立つじゃない」
「怒りました?」
「当たり前よ」
森山君が笑った。
「森山君がこんなに意地が悪いなんて知らなかった。無理矢理シナリオを書かせる事になったの、まだ根に持ってるんでしょう?」
「根には持ってますよ。休日が無くなったんですから」
「私に八つ当たり?」
「そんな子どもっぽい事しませんよ。ただ」
「ただ、何?」
「さっき、由香ちゃんと公園を散歩して気づいんたんです。一緒に散歩したかった人は由香ちゃんじゃなくて、葵さんだって」
もう、私と散歩したかったなんて言わないでよ。調子が狂うじゃない。
「春川です」
これ以上、森山君のペースに乗せられてたまるか。
「葵さん呼びはダメですか?」
「私の事からかって楽しんでるんでしょ?」
「からかってなんかいませんよ」
森山君の手が伸びて、躊躇うように頬に触れた。指先が冷たかった。
「本当はどうしたらいいかわらかなくて、ちょっと戸惑ってるんです」
森山君がため息をついて、手を離した。
「戸惑うって何を?シナリオの事?それなら私、精一杯サポートするから。不安なのはわかるけど、一緒に頑張ろう」
森山君が苦く笑った。
「春川さんは頭の中、仕事の事しかないんですね」
「えっ」
「何でもありません。帰ります」
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