3話 缶詰になります。

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「危ないな。至近距離で物を投げないで下さい」 「だって困る事ばかり言うんだもの。腹が立つじゃない」 「怒りました?」 「当たり前よ」  森山君が笑った。 「森山君がこんなに意地が悪いなんて知らなかった。無理矢理シナリオを書かせる事になったの、まだ根に持ってるんでしょう?」 「根には持ってますよ。休日が無くなったんですから」 「私に八つ当たり?」 「そんな子どもっぽい事しませんよ。ただ」 「ただ、何?」 「さっき、由香ちゃんと公園を散歩して気づいんたんです。一緒に散歩したかった人は由香ちゃんじゃなくて、葵さんだって」  もう、私と散歩したかったなんて言わないでよ。調子が狂うじゃない。 「春川です」  これ以上、森山君のペースに乗せられてたまるか。 「葵さん呼びはダメですか?」 「私の事からかって楽しんでるんでしょ?」 「からかってなんかいませんよ」  森山君の手が伸びて、躊躇うように頬に触れた。指先が冷たかった。 「本当はどうしたらいいかわらかなくて、ちょっと戸惑ってるんです」  森山君がため息をついて、手を離した。 「戸惑うって何を?シナリオの事?それなら私、精一杯サポートするから。不安なのはわかるけど、一緒に頑張ろう」  森山君が苦く笑った。 「春川さんは頭の中、仕事の事しかないんですね」 「えっ」 「何でもありません。帰ります」
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