773人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
森山君の提案で二人で公園に行く事になった。昨夜、新井さんと来た公園がホテルから歩いて5分ぐらいの所にあると、森山君が言った。
ホテルから出ると、頬に感じる風が気持ち良かった。天気もいいし、仕事なんて忘れたい日ではある。
「公園ってあそこ?」
歩道沿いにある公園の入り口を見つけた。
「そうです」
中に入ると、噴水の広場があって、近くに園内マップが出てた。
テニスコート、ピクニック広場、アスレチック広場、野外ステージ、図書館などの施設が書いてある。
けっこう、広い公園なんだな。
「一周りすると、一時間ぐらいかかりそうですね」
案内板を見ながら森山君が言った。
「昨夜は少ししか歩かなかったから、こんなに広いとは思わなかったな」
「新井さんと一周しなかったんだ」
「疲れてましたからね。噴水近くのベンチに座って、少し話しをして帰りました」
「夜の公園も雰囲気ありそうだね」
「暗がりでキスってのもいいですね」
キスって言葉に森山君とのディープキスを思い出して顔が熱くなった。
「な、何言ってるの」
「春川さん、今、エッチな事想像した?」
「してません」
「顔が赤いですよ」
森山君の手のひらが頬に触れた。たったそれだけの事にドキッ。
「もうっ、からかわないで」
大きな手を振り払うと、その手でギュッて掴まれた。
「も、森山君?」
「手をつないで歩きませんか?」
「えっ」
「恋人みたいに」
そう言って森山君が指の間に指を入れる恋人つなぎをした。
大きな手に包まれて胸がドキドキしてくる。
「こういうの、恋人つなぎって言うんでしょ?」
森山君がからかうように笑った。
「そうだけど。私たちは違うでしょ」
手を離そうとしたら、強い力で掴まれた。
「森山君、何?」
「実は春川さんにお願いがあるんです」
眼鏡越しの黒い瞳が真剣な様子でこっちを見てた。
最初のコメントを投稿しよう!