4話 缶詰2日目 恋人代用品。

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 森山君の提案で二人で公園に行く事になった。昨夜、新井さんと来た公園がホテルから歩いて5分ぐらいの所にあると、森山君が言った。  ホテルから出ると、頬に感じる風が気持ち良かった。天気もいいし、仕事なんて忘れたい日ではある。 「公園ってあそこ?」  歩道沿いにある公園の入り口を見つけた。 「そうです」  中に入ると、噴水の広場があって、近くに園内マップが出てた。  テニスコート、ピクニック広場、アスレチック広場、野外ステージ、図書館などの施設が書いてある。  けっこう、広い公園なんだな。 「一周りすると、一時間ぐらいかかりそうですね」  案内板を見ながら森山君が言った。 「昨夜は少ししか歩かなかったから、こんなに広いとは思わなかったな」 「新井さんと一周しなかったんだ」 「疲れてましたからね。噴水近くのベンチに座って、少し話しをして帰りました」 「夜の公園も雰囲気ありそうだね」 「暗がりでキスってのもいいですね」  キスって言葉に森山君とのディープキスを思い出して顔が熱くなった。 「な、何言ってるの」 「春川さん、今、エッチな事想像した?」 「してません」 「顔が赤いですよ」  森山君の手のひらが頬に触れた。たったそれだけの事にドキッ。 「もうっ、からかわないで」  大きな手を振り払うと、その手でギュッて掴まれた。 「も、森山君?」 「手をつないで歩きませんか?」 「えっ」 「恋人みたいに」  そう言って森山君が指の間に指を入れる恋人つなぎをした。  大きな手に包まれて胸がドキドキしてくる。 「こういうの、恋人つなぎって言うんでしょ?」  森山君がからかうように笑った。 「そうだけど。私たちは違うでしょ」  手を離そうとしたら、強い力で掴まれた。 「森山君、何?」 「実は春川さんにお願いがあるんです」  眼鏡越しの黒い瞳が真剣な様子でこっちを見てた。
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