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「お願いって?」
「俺の恋人になって下さい」
こ、恋人……?
え、え、え……聞き違い?それとも本当に恋人って言われた?
「そんなに怯えた顔しないで下さい」
森山君がクスッと笑った。
「シナリオが書き終わるまで、恋人の代用品になってくれませんか?」
代用品?つまり本物じゃないって事?
「さっき春川さんに手つなぎシーンが書けてないって言われて、恋人が必要だと気づいたんです。シナリオを書いている間は恋をしていないと、ときめきなんて書けません。春川さんに納得してもらえる物が書きたいんです」
そういう事か。意図がわかってほっとする。
森山君、真面目なんだな。ちゃんとシナリオに向き合ってくれてるんだ。
いい物書いてもらいたいし、協力できる事はしてあげたいけど……。
「そういう事なら協力するけど、私でいいの?」
「春川さんしかいませんから」
「確かにシナリオ執筆中に側にいるのは私だけね」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「え」
目が合うと黒い瞳が気まずそうに動いた。
「いえ、何でもありません。シナリオが終わるまでよろしくお願いします」
「うん。こちらこそ」
かなり照れくさい。代用品と言えども森山君の恋人になるなんて。
胸がまたドキドキして来た。
静まれ、私。ただの代用品なんだからそんなにときめくな。
「ところで、恋人としてのスキンシップはどこまでしてもいいですか?」
森山君がこっちを見た。
「えっ、スキンシップ?」
裸の森山君とつながっている所を想像してしまい、気まずくなった。
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