4話 缶詰2日目 恋人代用品。

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 泣いた後はまた公園の中を歩いた。  フワフワの落ち葉の上で鬼ごっこをしたり、黄金色に染まったイチョウの葉を拾って、森山君と恋人みたいにじゃれあって楽しんだ。  おかげで真人に会ってグラグラになっていた気持ちは落ち着いた。  スキップしたいぐらいわくわくしながら、さらに歩みを進めると、赤い煉瓦の四角い建物が目につく。  青銅色の看板には区立図書館と年季の入った文字が刻まれている。  そしてその前には『白猫カフェ』と白字で書いてある焦げ茶色ののぼりが出てた。 「森山君、お腹すかない?」  メニューが載った看板も出ていて、見ていたらぐうーっとお腹の奥が鳴りそうになる。 「もう12時か。確かに何か食べたいですね」  森山君が腕時計を見ながら言った。 「ここでランチして行こうよ」 「いいですよ」  森山君の手を取って建物の中に入った。  正面には螺旋階段があって、カフェは地下一階にあるという案内が出ていた。  階段を降りると、コーヒーの香りがフロア中に漂っている。 「コーヒーの香りって安心しますね」  森山君が言った。 「私もこの香り好き」  すぅーと吸い込むと香ばしい匂いで鼻の中がいっぱいになる。  うーん、疲れが取れそう。 「葵さんの香りもほっとしますけど」  森山君が屈んで、いきなり鼻先を私の首にくっつけて、くんくんし出した。 「森山君、くすぐったい」 「俺、こうやって匂い嗅ぐの好きなんです」 「歩いたから汗臭いよ」 「いい香りしかしません」  耳元でクスクス笑う森山君の声が響いて、距離の近さを意識してしまう。 「もうっ、お店の前でやめて。恥ずかしいでしょ」  すぐ目の前に白猫カフェがあった。お店の窓から私の首筋に鼻をあてている森山君の姿が見える訳で、中にいる人たちは私たちをバカップルだと呆れてるだろう。 「葵さんは人前でいちゃいちゃするのはダメなんですか?」  森山君がようやく離れて首を傾げてこっちを見下ろした。 「当たり前でしょう。いい年して恥ずかしい」 「俺は恥ずかしがる葵さんを見るのが好きなんですけどね」  ニッと意地悪く微笑んだ口元を見て、森山君にだったらいじめられるのもいいと思ってしまう。  こういうのマゾっ気って言うのかしら。  そう思った瞬間、顔が熱くなった。    何て事を考えてるんだろう、私。 「変な事言ってないで、行くわよ」  熱くなった頬に気づかれないようにカフェに入った。
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