4話 缶詰2日目 恋人代用品。

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 サラダとライスが付くハンバーグセットと、ブレンドコーヒーを二つ頼んだ後、森山君が疲れたように息をついた。 「喉かわきました」  氷の入った水を美味しそうに森山君が飲んだ。 「30分ぐらい歩いたもんね。鬼ごっこもしたし」  私も水に口をつけた。レモンの風味が清々しい。 「葵さん、疲れてませんか?」  眼鏡の奥の瞳が優しく見えた。 「大丈夫よ。森山君は?」 「午後は昼寝がしたいです」 「ダメよ。シナリオがあるんだから」 「わかってますよ。願望を言っただけです」 「願望ね」 「他にもいろいろありますよ。葵さんに膝枕で耳掃除してもらうとか、葵さんに頭を撫でてもらうとか」  意外な願望を知って笑みが浮かんだ。 「甘えん坊なのね」 「恋人には甘えますよ。葵さんは何か俺にして欲しい事とかないんですか?」 「シナリオを書いてもらいたい」  森山君が苦く笑った。 「仕事熱心ですね。ランチの時ぐらい仕事を忘れたらどうですか?」 「そう言われても、私って仕事しかないのよね。趣味と呼べるような物もないし」 「少女漫画とか映画とか、面白いのがあったら教えてくれるじゃないですか。あれは趣味じゃないんですか?」 「うーん、ゲームを作る為にチェックしてるから、仕事の一部って感じがする。そう考えると本当に何もないな。私ってつまんない女だね」  自分でも呆れちゃう。  ゲームのヒロインが私みたいだったら話はあまり膨らまなそう。 「そんな事ないですよ」  森山君が穏やかな笑顔を浮かべた。 「葵さんはいつも一生懸命で素敵です」  えっ、素敵?  びっくりして、まじまじと森山君を見てると、「本当に素敵ですよ」ともう一度言ってくれた。  胸がじんわりと温かくなる。  森山君っていい人だな。こんな私を認めてくれるなんて。 「さっきはありがとね」 「さっき?」 「結婚するって言ってくれて。おかげで惨めな気持ちにならないで済んだ。嘘でも結婚を約束した彼氏がいる事をあの人に見せられて良かった」  眼鏡越しの瞳が気まずそうに視線を逸らした。  何か変な事を言った?  
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