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ホテルには一時半ごろ戻って来た。
森山君の隣でノートパソコンに向かいながら、うきうきしているのを感じた。
昨日よりも胸キュンシーンを書くのが楽しい。
恋人効果が出てるんだ。やっぱり恋人の存在って凄いな。こんなに恋のお話が楽しく書けちゃうなんて。
森山君の提案は正解だったんだ。
森山君もウキウキしながら書いてるのかな。
ふと、右隣を見ると、真剣な表情でキーボードを叩く姿があった。鼻筋の通った横顔が凛々しくてカッコイイ。にやけそうになる。
「葵さん、何ですか?」
ノートパソコンに視線を向けながら森山君が言った。
「何でもないよ」
「こっち見てませんでした?」
「シナリオを書いてる森山君、カッコイイなって見てたの」
キーを叩く手が急に止まって、森山君がこっちを見た。
頬が少し赤い。
「へ、変な事言わないで下さい。調子狂いますから」
「もしかして照れてる?」
「……照れますよ」
黒縁眼鏡のフレームを抑える森山君が恥ずかしそうに見えた。
かわいい。こんな一面あったんだ。
「余計な事言ってないで仕事して下さい。七時からデートするんですから」
夕食も外で食べようと誘われていた。
「夕飯食べに行くのはデートになるの?」
「恋人同士だとデートになるんです」
そう言った森山君はやっぱり照れくさそうに見えた。
「今日は二回デートが出来るんだ。恋人って楽しいね」
再びパソコンに向かい、私たちはキーボードを叩き始めた。
そして、本日終了予定時刻の六時をあっという間に迎えた。
予定では4話までだったけど、5話まで終わらせる事が出来た。
執筆が順調に進んでる。この調子だったら缶詰期間中に全20話書き終わりそう。
「葵さん、スマホ点滅してますよ」
森山君の声でノートパソコンからテーブルの上のスマホを見た。
着信は夏目さんからだ。
日曜日に電話してくるなんて珍しい。何かトラブル?
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