4話 缶詰2日目 恋人代用品。

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 ホテルには一時半ごろ戻って来た。  森山君の隣でノートパソコンに向かいながら、うきうきしているのを感じた。  昨日よりも胸キュンシーンを書くのが楽しい。  恋人効果が出てるんだ。やっぱり恋人の存在って凄いな。こんなに恋のお話が楽しく書けちゃうなんて。  森山君の提案は正解だったんだ。  森山君もウキウキしながら書いてるのかな。  ふと、右隣を見ると、真剣な表情でキーボードを叩く姿があった。鼻筋の通った横顔が凛々しくてカッコイイ。にやけそうになる。   「葵さん、何ですか?」  ノートパソコンに視線を向けながら森山君が言った。 「何でもないよ」 「こっち見てませんでした?」 「シナリオを書いてる森山君、カッコイイなって見てたの」  キーを叩く手が急に止まって、森山君がこっちを見た。  頬が少し赤い。 「へ、変な事言わないで下さい。調子狂いますから」 「もしかして照れてる?」 「……照れますよ」  黒縁眼鏡のフレームを抑える森山君が恥ずかしそうに見えた。  かわいい。こんな一面あったんだ。 「余計な事言ってないで仕事して下さい。七時からデートするんですから」  夕食も外で食べようと誘われていた。 「夕飯食べに行くのはデートになるの?」 「恋人同士だとデートになるんです」  そう言った森山君はやっぱり照れくさそうに見えた。 「今日は二回デートが出来るんだ。恋人って楽しいね」  再びパソコンに向かい、私たちはキーボードを叩き始めた。  そして、本日終了予定時刻の六時をあっという間に迎えた。  予定では4話までだったけど、5話まで終わらせる事が出来た。  執筆が順調に進んでる。この調子だったら缶詰期間中に全20話書き終わりそう。 「葵さん、スマホ点滅してますよ」  森山君の声でノートパソコンからテーブルの上のスマホを見た。  着信は夏目さんからだ。  日曜日に電話してくるなんて珍しい。何かトラブル?
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