4話 缶詰2日目 恋人代用品。

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 緊張しながら電話に出ると、夏目さんの優しい声がした。 「春川、お疲れ。シナリオはどうだ?」 「お疲れ様です。予定通りに進んでます」 「それは良かった。ところで今夜、春川と森山君を夕飯に誘いたいんだが、都合はどうだ?」  ご飯に誘ってくれるなんて嬉しい。外で食べる予定だったし、いいかもしれない。 「夏目さんのおごりですか」 「もちろん。君たちには頑張ってもらってるからな。何でもいいぞ。好きな物を食わせてやる」 「わかりました。森山君と相談してみます」  電話を切って、隣でキーボードを叩いている森山君を見た。 「電話、夏目さん?」 「うん。夏目さんが夕飯ごちそうしてくれるって」  森山君も喜ぶと思ったら、一瞬険しい表情を浮かべた。 「そうですか」 「ねえ、何が食べたい?焼肉?ステーキ?それともお寿司?」 「俺はいいですよ。春川さんだけ行って来て下さい」 “春川さん”って呼び名に距離を感じる。今日はずっと葵さんって呼んでくれてたのに。 「遠慮しなくていいよ。行こうよ。どうせ外で食べる予定だったし」 「予定に夏目さんは入っていませんでしたから」  もしかして私とデートがしたかったの? 「三人でデートも楽しいよ」 「デートとは言いません。食事会です」 「食事会もいいじゃない。せっかく夏目さんが声かけてくれたんだし。きっと高いお店連れて行ってくれるよ。こんな機会中々ないし」 「春川さん、嬉しそうですね」 「だって夏目さんと森山君とご飯だって思ったらウキウキするもの」 「春川さん」  森山君が静かに言った。 「何?」 「思うんですけど、恋愛の傷は新しい恋愛をしないと治らないと思うんです」 「新しい恋愛?」 「上書きする事で古い恋は忘れるって事です」 「何が言いたいの?」
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