781人が本棚に入れています
本棚に追加
「だったらその人と恋人になればいいのに」
口にしてみて、言ってはいけない言葉だったと後悔する。
想いを告げられないから片思いでいるんだ。その苦しさは誰よりもわかってるはずなのに。
森山君を見ると、案の定、傷ついたような表情を浮かべていた。
「ごめん」
「いいんですよ」
森山君が傷ついたままの表情で口の端を上げた。
「俺の事は気にしないで下さい」
「森山君、本当に行かないの?」
「春川さん、俺の心配なんかしてないでせっかくのチャンスを物にする事を考えたらどうですか?夏目さんと二人きりの夜なんて滅多にないんでしょう?」
「そうだけど」
いきなり二人きりなんて困る。
森山君がいてくれた方がいいのに。
「今は夏目さんフリーですよ」
「知ってる」
「だったら迷う事なんてないじゃないですか」
「夏目さんに気持ちを伝えろって言うの?」
森山君が頷いた。
「無理に決まってるでしょ。下手に告白してフラれたら会社にいづらくなるし。それに社長だし」
クスクスっと森山君が笑った。
「確かにそれもありますね。気持ちを伝えるかどうかは別にして、二人きりで過ごす時間は大切ですよ。少しずつ距離を縮めていったらどうですか?」
「森山君は夕飯どうするの?」
最初のコメントを投稿しよう!