4話 缶詰2日目 恋人代用品。

16/18
前へ
/207ページ
次へ
「適当に出かけますから心配しないで下さい」 「片思いの人に会いに行くの?」 「それは秘密です」 「人の事あおっておいて、森山君は何もしないなんてズルい。ちゃんと会いに行って来て。じゃないと私も夏目さんに会わない」 「わかりましたよ。会いに行きますから」 「それで明日、報告ね」 「春川さんも報告してくださいよ」 「わかったわよ」 「じゃあ、お疲れ様です」 「うん、お疲れ様」 「春川さん」  森山君が座ったままじっとこっちを見上げた。 「何?」 「キス」 「え」 「一日一回は恋人の代用品としてキスする事になったでしょ。今日はまだしてません」  森山君がそう言って、眼鏡を外した。  目鼻立ちの整った王子様フェイスが現れてドキッとする。 「今するの?」 「今しかないから」  森山君が立ちあがった。  それからあっという間に距離が縮まって抱きしめられた。 「葵さん、キスしていい?」  耳元で優しく囁かれた。  葵さんって呼んでくれた事が嬉しい。そっか、恋人時間の時はそう呼んでくれるんだ。  ゆっくり頷くと、唇に唇が重なった。  唇にキスはダメだって言ったのに……。  抵抗できない。深いキスに頭の奥がのぼせた。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

781人が本棚に入れています
本棚に追加