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「適当に出かけますから心配しないで下さい」
「片思いの人に会いに行くの?」
「それは秘密です」
「人の事あおっておいて、森山君は何もしないなんてズルい。ちゃんと会いに行って来て。じゃないと私も夏目さんに会わない」
「わかりましたよ。会いに行きますから」
「それで明日、報告ね」
「春川さんも報告してくださいよ」
「わかったわよ」
「じゃあ、お疲れ様です」
「うん、お疲れ様」
「春川さん」
森山君が座ったままじっとこっちを見上げた。
「何?」
「キス」
「え」
「一日一回は恋人の代用品としてキスする事になったでしょ。今日はまだしてません」
森山君がそう言って、眼鏡を外した。
目鼻立ちの整った王子様フェイスが現れてドキッとする。
「今するの?」
「今しかないから」
森山君が立ちあがった。
それからあっという間に距離が縮まって抱きしめられた。
「葵さん、キスしていい?」
耳元で優しく囁かれた。
葵さんって呼んでくれた事が嬉しい。そっか、恋人時間の時はそう呼んでくれるんだ。
ゆっくり頷くと、唇に唇が重なった。
唇にキスはダメだって言ったのに……。
抵抗できない。深いキスに頭の奥がのぼせた。
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