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「おはようございます」
朝九時に森山君の部屋に行くと、昨日までと違ってワイシャツにネクタイ、スラックス姿の森山君が出て来た。
まさかのスーツ姿に少し戸惑った。
今日もTシャツジーパンかと思っていたけど、前髪までしっかりとセットしてて完全にビジネスマンスタイルになってる。
オフィスにいるみたい。いや、それ以上にしっかりした格好でいる。
凛とした姿に、三割増しでカッコよく見えてしまう。
今日はどうしたんだろう?
「10時からスポンサー企業との打ち合わせがあるんです」
私の視線にこちらから聞かなくても解答があった。
スポンサー企業との打ち合わせ!
そうだった。忘れてた。
「私も支度しなきゃ」
「春川さんはここでシナリオのチェックをしてて下さい。チーフの山本さんが行くから大丈夫です」
「でも……」
「山本さんに引き継いだんでしょ?春川さんが行ったら嫌な顔されますよ」
「だったら森山君も行かない方がいいんじゃないの?」
「さっき山本さんから電話があって、俺には出席して欲しいと言われてるんです。細かい事務関係の確認がありますから」
こっちには何の連絡もなかった。
森山君を引っ張り出すなら、まずは私に連絡を入れるべきなんじゃないの?
「膨れないで下さい」
クスッと森山君が笑った。
「だって、仲間外れにされたみたいで面白くないんだもん」
クックックッとさらに楽し気な笑い声が響いた。
「子どもみたいな事言ってないで、春川さんには仕事が沢山ありますよ」
大きな手が私をあやすように撫でてくれた。
朝から胸がキュンとする。
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