5話 缶詰3日目 傘の人。

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 目の前には森山君の顔があって、直視できない。私はなんでこんなに狼狽えているんだろう。  夏目さんと二人きりでいた時よりも、今の方が感情が揺さぶられてる。  シナリオが終わって、缶詰生活が終わるのがちょっと寂しいと思っただけ。  たった一言そう言えればいいのに、そんな事を言ったら引かれてしまう気がして、死んでも言えない。  このねじ曲がった気持ちは一体なんだろう。自分の気持ちを隠したいけど、気づいてもらいたいようなこの気持ちは……。  目が合うと、眼鏡の奥の瞳が優しく微笑んだ気がした。 「昼には戻って来ますから、ランチは一緒に取りましょう」  その言葉にテンションが上がった。 「うん。また昨日の『白猫カフェ』行きたい」  すっかりお気に入りの店になった。 「いいですよ。尋問の続きはその時に」  猫を撫でるみたいに優しく頭をまた撫でてくれた。 「だから、何でもないって」  撫でられたのが嬉しいけど、そういう気持ちはやっぱり隠したい。  だからちょっとだけ、不愉快な表情を浮かべた。 「夏目さんとの夜、楽しめました?」  私から離れて、鞄に荷物をまとめながら森山君が言った。
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