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それから創記は急に難しい言葉を連ね始めた。普段は決して会話の上手でない相手が、まるで紙に書いてある文章を音読するかのようにすらすらと暗唱する姿は、幼い俺にも異様に見えた。
アーメン。という一言で、創記はいつも通りに戻る。
「って、言った」
「まいにち?」
「うん。で、かんゆドロップもらった!」
ここから先のことはよく憶えていない。次に思い出せる記憶の中で、俺はパイロットになりたいと言う。
将来の夢を発表する会での出来事だった。その寸前まで、俺は『おおきくなったらなにになりたいですか』の下の空欄に何を書けばいいか分からなかった。既に戦隊ヒーローになりたいと思うのは馬鹿げていると知っていたが、具体的な職業が頭に浮かぶ訳でもない。
それで結局、隣にいる創記の真似をしたのだ。創記は俺と将来の夢が同じであることに何の関心も示さなかった。先生は俺にも創記にも「立派なパイロットになってくださいね」と言った。
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