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雨なんて
雨が嫌いだ。濡れるのも、湿気で髪の毛が上手くまとまらないのも嫌になる。一番嫌になるのは、傘もないのに雨が降ってくる時だ。 仕事が終わり、帰って一杯だと心を弾まされながら、ビルから出ようとしたらこれだ。
「どうするかな、傘ないし」
会社から駅までは10分ほどだ、走っていけると思えるような雨ではない。
「先輩また傘ないんですか」
振り返ると人を馬鹿にしたような顔してる後輩がいた。
「先輩、天気予報くらい見たらどうですかね、今日降るって予報出てましたよ」
「いやそうなんだけど、朝急いで出ると忘れて」
「社会人なんですから時間に余裕を持って行動してくださいよ」
後輩に説教される先輩ってめちゃくちゃ情けないよなと思っていると
「じゃあ、先輩帰りますね」
一通り説教した後輩は、帰ろうとしていった。
「そうか、お疲れさま」
「冗談ですよ、ほら傘もって。一緒に帰りますよ」
「いいのか、ありがとう」
なんだかんだと、優しい後輩である。
「ほんと、なんでこんな人を好きになったんだろう。この笑顔は反則だよ
「何かいった?」
「何でもないですよ、先輩濡れますからちゃんと寄ってくださいよ」
何か言っていたと思ったのは気のせいだったらしい。傘に入れて貰えただけでありがたい。雨に濡れないように後輩に寄った。
たまには雨も悪くないのかもしれない。
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