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そして屋上に残された幸守はというと、美雅が出ていった扉を見ながら嬉しそうに笑っていた。
―――・・・美雅さん、僕の名前を憶えてくれていたんだ・・・。
最初はずっと“君”呼ばわりだったため、憶えてくれていないと思っていた。 美雅と幸守は確かについ先程話したのが最初だったから、それが自然だ。 ただしそれは“今回の人生では”とつく。
―――ようやく見つけた。
―――僕が前世で、一番愛した人。
前々から何か思うところはあった。 何故かやたらと気になるし、初めて会った時も他人のような気がしなかった。 そして今話してみて分かったのだ。
美雅も自分と同様に、前世の記憶があるということを。
―――・・・あの時は不倫を言い訳にしたけど、本当は違う。
―――友達の借金の連帯保証人になって、大きな借金を抱えてしまったからだ。
―――最愛の妻だけは巻き込みたくなくて別れを告げた。
―――・・・あの後、自殺をしたと聞いてショックだったな。
―――僕が後追いしたのも憶えている。
幸守は深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、ベンチから立ち上がった。 もう姿は見えないが屋上の入り口を見据えて誓いを立てる。
「僕が君の笑顔を、今度こそ守り切ってみせるから」
-END-
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