生まれて初めての涙

4/4
前へ
/4ページ
次へ
そして屋上に残された幸守はというと、美雅が出ていった扉を見ながら嬉しそうに笑っていた。  ―――・・・美雅さん、僕の名前を憶えてくれていたんだ・・・。 最初はずっと“君”呼ばわりだったため、憶えてくれていないと思っていた。 美雅と幸守は確かについ先程話したのが最初だったから、それが自然だ。 ただしそれは“今回の人生では”とつく。 ―――ようやく見つけた。 ―――僕が前世で、一番愛した人。  前々から何か思うところはあった。 何故かやたらと気になるし、初めて会った時も他人のような気がしなかった。 そして今話してみて分かったのだ。  美雅も自分と同様に、前世の記憶があるということを。 ―――・・・あの時は不倫を言い訳にしたけど、本当は違う。 ―――友達の借金の連帯保証人になって、大きな借金を抱えてしまったからだ。 ―――最愛の妻だけは巻き込みたくなくて別れを告げた。 ―――・・・あの後、自殺をしたと聞いてショックだったな。 ―――僕が後追いしたのも憶えている。 幸守は深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、ベンチから立ち上がった。 もう姿は見えないが屋上の入り口を見据えて誓いを立てる。 「僕が君の笑顔を、今度こそ守り切ってみせるから」                                                                                                       -END-
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加