学生Gの末路

1/8
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 六月の終わり、Gはふと思い立って普段あまり使わない(かばん)の中身を確認していた。単位取得の為のレポートに行き詰まったのがきっかけである。高校時代もそうだが、どうも彼は試験前に注意力が散漫になり、別の所に目がいってしまう性分(しょうぶん)らしい。漁っていると色々な物が出てきた。コンビニのレシート、お菓子の残り、鼻をかんで捨て忘れたティッシュ。どうして日本はこうも外にゴミ箱が無いのだろうとGは思う。捨てる場所がもっと多ければ私の鞄の中も幾分か清潔に保てるはずなのに。Gの意見には賛成だが、彼は進捗(しんちょく)が滞っている論文のイライラを、日出づる国の数少ないゴミ箱にぶつけているのである。確かにGは決して怠惰(たいだ)な性格ではない。講義にはちゃんと出席しているし、今まで落とした科目もほとんどない。洗っていない食器達が無尽蔵に積み重なる事も無いのだ。(むし)ろ興味がある事柄に関しては几帳面な方である。彼は小学生の頃、朝顔の観察日記や、セミが羽化するまでの記録をつけたりするのが好きだった。今も手帳には自身の予定がきっちりと書かれている。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!