学生Gの末路

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 そんな彼が鞄の底から飲みかけの五百ミリリットルのペットボトルを一本発見した。皆さんも一度はこのような経験があるのではないだろうか。私はある。つい先程も、いつ口をつけたか分からないペットボトルを見つけ、中身を流しに捨てた所だ。話を戻すがGは専らミネラルウォーターを買っている。理由としては飲み物の中では一番安価だし、何より飲み合わせや食い合わせを気にする必要が無い。おにぎり、サンドイッチ、胃腸薬、全てに対応出来る万能飲料だ。彼もまた中身の水を捨てようと思い立ち上がったが、ペットボトルの下の方に沈んでいる奇妙な物体に気づいた。底に沈殿しているそれはさながら塩の粒の様で、ゆらゆらと光を屈折させ陽炎(かげろう)(ごと)き振る舞いをしている。試しに少し振ってみた。溶ける訳でもなく、上の方へ少し舞った後また底へゆっくり戻って行った。口内には無数の雑菌がいると言われている。もしかしたらその菌のどれかが水を腐らせただけかも知れない。しかしGは好奇心をくすぐられたのか、手帳に     六月二十八日 飲みかけのペットボトルに沈殿した透明な何かを発見。これから観察して行きたいと思う。塩か砂糖に見えたが少し振ってみても溶けない。 と綴った。これは絶好の暇つぶしである。例え変化が無かったとしてもこうやって何かを見て書き留めるのが楽しい。分厚い書物の考察をまとめたり、ある問いに対して自身の考えを述べたりするよりずっと面白い。彼はレポートや講義の合間にこの謎の物体の観察を始めた。  六月二十九日 変化無し。六月三十日 変化無し。 まあ当然と言えば当然だろう。G自身もさほど期待はしていなかった。もう少し経過を観察してみて何も起こらなかったらとっとと捨ててしまおうと考えていた。しかし翌日の朝、変化が訪れる。
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