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私はあまりの綺麗さに「うわ~」としか言葉が出ない。
こんな高さから花火を見ることは始めてだった。
花火は大きく広がってはいるが、決して近くはないため怖くない。
「これを見せたかったんだ。思った以上に時間がちょうどで、俺も驚いたけど」
「秋月部長の誘いで、初めて来てよかったと思いました」
「ツンツンはなし」
「わかりました、今日限定です」
まさか、こんなにも大きな花束をもらえるとは思いもしなかった。
色とりどり、形も様々な花火が舞う。
窓に張り付くように私は見た。目に焼き付けたかった。
「そろそろ終わりかな」
再び秋月部長は腕時計を確認する。
「はかないですねぇ。こんなに綺麗なのに、終わりがくるなんて」
「綺麗だから終わりが来るんだよ。綺麗じゃないまま、永遠でいたって辛いだけ。終わるから綺麗。だから大事にしたいと思える」
「らしくない、いい言葉」
「らしくないは余計だよ」
秋月部長はくったくのない笑みを浮かべる。
強かったり弱かったりする光がその顔にあたって、胸が苦しく響く。
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