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「えっ、魔女!?」
私は迷惑にならない程度に声を上げた。
おばあちゃんは「くっくっくっ」笑顔がみるみるうちに不気味に見える。
「そう、私は魔女」
「まさか……本当に……」
「ばあちゃんギャグだけどね」
「……ですよね」
私たちは吹き出すように笑った。
もうずっと前に私はおばあちゃんを亡くしたから、久々の感覚だった。
「半分は信じてたでしょう?若いっていいわね。素直で」
「若くもないですよ。29ですし……素直でもないし。それよりこれ、どうぞ。魔女でもお化けでも、お年寄りには優しくしなきゃ。このまま私が買っちゃったら、それこそ悪魔です」
「お年寄りは失礼よ。私だってまだ84、現役よ」
わざとらしくイジワルな顔をして舌を出す。
こんなおばあちゃんになりたいな、と漠然と自分の将来を想像していると「お嬢さん、今からうちに来ない?お礼もしたいし、老人の独り暮らしは寂しいのよ。あら、でも明日は土曜だからデートの約束でもあるわよね」と、お年寄りとは思えないほどの潤った透き通る瞳で見上げられた。
私は自分の買い物カゴを差し出して中身を見せる。
「あらあら、お嬢さんもお仲間ね」
「そうなんですよねぇ、嬉しいことに」
おばちゃんを真似するように舌を出す。
「決定ね、いらっしゃい。魔女の館へ」
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